構法・材料
実物の作成に際して、モックアップ制作とシミュレーションを往復して得られた知見を、設計に落とし込んでいきました。ベンディングアクティブ・テンサイル・ハイブリッド構造では、弾性体の剛性と膜の張力を釣り合わせることが肝になります。そのため、ロッドと帯には様々な工夫を施しました。
ロッドが帯によって引っ張られることで変形するというのが本設計の基本です。しかし、実際にはこれに加えてロッドの重さ分の重力がかかります。また、ロッドが大きく変形しても、素材は弾性範囲に留まっている必要があります。よって、ロッドの素材に求められるのは、自重の軽さと張力+自重に耐える剛性、そして弾性範囲の広さです。これを満たす素材として、カーボン丸棒を採用することにしました。
カーボンの欠点はその価格の高さです。径が太いほど価格は高く、入手は難しくなります。そこで、入手しやすい細いカーボン丸棒を3本束ねて1本のロッドを構成することにしました。この作り方には他にも様々な恩恵があります。まず、構造の項で述べたように断面形状を自由に設定することで、意匠や構造の要求を満たしています。加えて、3本のカーボンはそれぞれの区間で微妙に長さを変えています。これによってロッドが湾曲し、帯を張る前の初期形状として機能します。また、カーボン同士の継手の位置をずらす事で、剛性の向上に寄与しています。
帯に強い張力をかけると、ロッドは簡単に曲がって地面についてしまいます。そのため、帯をあまり強く張る事はできません。一方で、帯を美しく見せるためにはピンと伸ばす必要があります。そこで、帯には高収縮のチュールを使用しています。チュールとは網目状のレースの一種で、軽い力でよく伸びるため、ロッドにかかる力を軽減することができます。布が網目状であることを活かして、帯の固定にはマジックテープを利用し、施工性を高めています。
この他にも様々な工夫を施すことで、モデリングソフトGrasshopperで生まれた形を具象化することを目指しました。